テレワーク

アイキャッチ : テレワーク

新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言下において、 テレワーク を実施した中小企業は5割以上、大企業では8割以上と言われており、コロナ禍でテレワークは広く浸透しました。この経験は、働く人や経営者の意識を変え、今後の日本におけるオフィスのあり方や働き方も大きく変わっていくでしょう。

テレワークによって、通勤の負担が減り、育児・介護・家事と仕事の両立がしやすくなるなど、働く人にとって大きなメリットがあります。一方で、長時間労働になりやすい、孤立しやすいなど、デメリットを感じる方も少なくありません。

今回は、テレワークに伴う働き方の工夫や心の健康維持について、考えてみました。

テレワークに伴う変化

就労環境

テレワークを続けるなかで、なんだか集中できないと感じることはありませんか?自宅は、仕事と関係ない日用品が視界に入りやすく、コタツなどで仕事をすると姿勢が悪くなり、集中しにくい環境といえます。また私の産業医面談の経験では、職場のような会話や雑音が少なく、静かすぎて集中しづらいという方もいらっしゃいました。

あいまいなモード

仕事場や服装を他の人に見られないないため、寝巻きなどで就業することがあるかもしれません。これだとプライベートから仕事にモードを切り替えることが難しく、パフォーマンスの低下を引き起こします。また、仕事モードのままプライベートを過ごしてしまい、結果的に十分に休養が取れず、メンタルの不調を引き起こす可能性が高まります。

生活習慣

朝の日差しを浴びないことで、体内時計を調整するホルモンが出にくくなり、生活リズムが乱れやすくなります。また徒歩や自転車など、通勤の際に必要であった体の運動がなくなるため、運動不足になりがちです。さらに、ランチを手軽に済ませたいため野菜や果物の摂取量が減りやすい反面、無意識の間食等が増加し、体重増加を招く可能性が高まります。

対話

コミュニケーションはweb会議システム(zoomなど)やテキストベース(メールやslackなど)や電話が主体となります。これらは、直接顔を合わせて内容を伝える方法よりも、煩わしい、あるいはハードルが高いと感じる方が多いようです。

誰にでも、日常生活の中でちょっとしたストレスや不安があります。それが会社で同僚の一言で救われたり、休み時間の会話で解決や発散できることがあります。テレワークでは、簡単な相談や雑談がしにくく、小さな困り事が積み重なって心理的負担が大きくなり、孤独感や落ち込みなどのメンタル不調が生じる場合があります。

またテレワークは、身振りや表情などの非言語コミュニケーションが取りづらいですし、web会議でも、利用者の視線がカメラではなく画面に向かうため、お互いの視線が合いにくいという状況があり、コミュニケーションによる癒やし効果が損なわれます。

デメリットの改善策 : テレワーク

環境の調整

パーテーションを設置して視界を制限したり、デスクワーク用の机や椅子を用意して姿勢を正すことで、仕事に集中しやすくなります。アロマを用いて、テレワークでのパフォーマンスを高めている方もいらっしゃいます。

また、静かな場所のほうが集中できる人は、ノイズキャンセラーイヤホンなどを利用したり、適度な雑音があったほうが集中できる人は、ホワイトノイズなどを流すことで集中力を高めることが効果的だと思われます。

モードの切り替え

ジャケットを着る・ネクタイを締める・お化粧するなど、出勤時のような準備をすると、仕事とプライベートのモードを切り替えやすいと思います。また業務時間中にはスマートフォンをしまったり、業務時間外に業務用PCを隠すことで、オンオフを徹底します。

ご家族(同居の方)がいらっしゃる方は、業務中に家族が介入することによって、仕事に集中できない場合があります。集中している時は声を掛けない等、ルールを決めて協力してもらうのも大事だと思います。

仕事とプライベートの切り替えの際、マインドフルネスを取り入れるのも効果的です。

生活習慣の見直し

毎朝、太陽の光を浴びる事は自律神経のバランスや生活リズムを整える効果があります。朝通勤していた時間は外に出て散歩したり、夕方通勤していた時間は趣味に取り組むことで、テレワークに伴うストレスを緩和しましょう。また、その日の始業時間、お昼休み、終業時間を決めてしまうのがおすすめです。

テレワークのメリットに、通勤時間がなくなることがありますが、その時間に仕事にあててしまう人も多くいらっしゃいます。確かに仕事の成果は向上するかもしれませんが、これで業務効率が上がったと考えてしまうのは危険です。この状態が続くと疲労が蓄積し、仕事の効率が下がり、健康を害することにも繋がります。

テレワークでは、休憩に誘ってくれる同僚はいません。一定時間ごとに、仕事関連のものを視界から遠ざけ、自宅で気軽に取り入れられるエクササイズやセルフマッサージで血行促進や体のコリを解消するなど、自分で意識して小休憩をとるのがおすすめです。

ランチは野菜や果物から先に食べると良いと思います。お菓子やお米や麺などの炭水化物から食べ始めると、血糖値があがりやすくなり、食後に眠くなったり、脂肪がつきやすい要因になります。また夕食の時間が遅くなると、肥満につながるうえ、胃腸を長時間働かせることになり、夜の睡眠の質も悪化します。20時までには夕食をすませ、寝ているあいだに胃腸を休めるようにこころがけましょう。

日中30分程の仮眠は効果的です。ただし、夕方以降に仮眠したり、カフェインを摂ることは夜の寝つきが悪くなるので避けてください。

対話の促進

テレワークだからこそ、上司や同僚たちと意識的に雑談や相談をしましょう。強い不安・ストレス・悩みがあっても、人に話すことにより、気が楽になったと実感する人は非常に多いです。相手が問いかけてくれる、察してくれるのを待つのではなく、知って欲しいこと、伝えたいことを、これまで以上に伝えることが大事です。

うなずき・相槌・身振り手振りなどのリアクションは大きめを意識しましょう。また普段以上に、感謝と労いの気持ちを言葉にして伝えることも大切です。さらに、相手の表情やしぐさなど言葉以外の様子もよく観察し、必要に応じた配慮があると素晴らしいです。

テレワークで減ってしまったコミュニケーションを回復するために、オンラインのランチ会や飲み会を企画する人たちもいます。メンバーのストレス緩和やチームの生産性向上のため、とても良い試みだと思いますが、これには注意も必要です。仕事以外の時間をわざわざ職場の人間関係とつながりたいと思う人たちばかりではなく、コロナ前は断る理由になった「家の用事で」が、テレワークでは使いにくいので、参加を強制せず断りやすいような配慮が必要です。

合理的・効率的に日々の業務を行うことに努めてきた私たちは、オンラインでのコミュニケーションも無駄を省き簡潔に行うことを心がけてきましたが、対面コミュニケーションの機会が少ない現在は、意識的に適度な雑談をする必要があります。やりとりのはじめに、直近のニュースやバーチャル背景の話など本題とは異なるテーマを入れるなど、あえて効率的でない時間を作って、張り詰め過ぎず緩急をつけるのがおすすめです。

まとめ : テレワーク

テレワークという業務形態は、働く人側にとって大きなメリットがある一方で、精神的な疲れや不安を生じる可能性があります。この事態が続くことを想定し、環境調整、モードの切り替え、生活習慣の見直しをした上で、コミュニケーションの質と量を高めることで、仕事の集中力とパフォーマンスを維持し、心の健康を保つことができると考えられます。

通勤がなくなったことで得られた時間は、仕事にあてるのではなく、散歩や趣味を増やす。このようなしなやかさが、これからの働き方に求められると思います。

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