長時間労働、仕事上のストレス、人間関係といった職場の問題をきっかけに、メンタルヘルスの不調をきたす労働者の方は少なくありません。そこで、不調に陥る前に職場の問題を改善したり、不調を早期発見して早めに対応することが、 職場における心の健康 において重要になってきます。
職場における心の健康 : セルフケア
セルフケアとはメンタルヘルスの不調に陥らないよう、自分でケアする方法です。まずはストレスに強くなりことが大事であり、ストレスに直面しても、それに早めに気づいて対処できれば、心の健康を維持しやすくなります。
ストレス耐性を上げる
ストレスを受けてもそれに耐える力、いわゆるストレス耐性を上げることが重要です。下記の項目ができていない状態、つまり生活習慣が乱れると、血圧上昇・脂質異常・血糖上昇・体重/腹囲増加など、健康診断の結果にあらわれることがあるので、健診結果(特に前年と比べてどうか)にも着目してみてください。
- 塩分や脂質を控えて野菜を多く摂るなど、バランスの良い食事
- ウォーキングなどの適度な運動
- リズムが安定した睡眠
ストレスに気づく
ストレスには、明らかに自分で認識できるものもあれば、わずかでも気づかないうちに蓄積していくものもあります。そういったストレスに気づくためには、職場のストレスチェックを利用するのが効果的です。
ストレスチェックとは、50人以上の従業員がいる会社で義務づけられている制度であり(50人未満の企業では今のところ努力義務)、自身のストレスの気づきを促したり、職場特有のストレス要因を把握するための検査です。
仕事に関してストレスがないか、ストレスによる心身の反応が出ていないか、周囲からのサポートがあるかを調査するので、ややデリケートな問題を扱いますが、結果は直接本人に提供されます。自身が感じるままに回答し、客観的な視点でストレスを見つけてもらいましょう。
ストレスへの対処法を身につける
自分自身で、ストレスの要因や心身の緊張といったストレス反応に気づけたら、それを解消していくことを目指します。喫煙や多量飲酒はおすすめできません。また、運動や趣味も、翌日の生活に影響を与えるほどの過剰な活動は逆効果になります。
ストレスチェックの結果に、セルフケアのアドバイスが含まれているので、対処の参考になると思います。また、以前書いた「ストレスへの対処法」以外にも、簡単にできるものとして以下のような対処法があるので、合いそうなものがあれば参考にしてみてください。
リラクセーション
自席で簡単にできる方法としては、腹式呼吸があります。自宅では、入浴・瞑想・ヨガなどを取り入れると非常に効果的です。
ストレッチ
長時間同じ姿勢でいたり、仕事や人間関係でストレスがかかる状況で、筋肉は緊張します。ストレッチは、筋肉の緊張を緩め、血行を促進し、心身をリラックスさせます。
趣味
趣味を介した人との交流は、新たな人間関係を生み、生活の幅を広げます。仕事から開放されているという実感が、かえって仕事への意欲も高めます。
笑い
「笑いのすすめ」でも書きましたが、笑いによって自律神経のバランスを整えたり、免疫力を正常化させたりする効果があります。日常生活に笑いを取り入れましょう。
親しい人との交流
友人や知人と話をすることで、不安やイライラが整理されて自ずと解決策が見えたり、効果的なアドバイスがもらえることもあります。
職場における心の健康 : 産業保健スタッフ等への相談
親しい人と話しても問題が解決しない場合、上司には相談しにくい場合には、産業保健スタッフに相談しましょう。健康相談受付として日常的に対応できる会社もあると思いますが、相談のきっかけが掴めなかったり、対応がない会社の場合でも、以下のようなタイミングで相談するとスムーズかもしれません。
ストレスチェック後
ストレスチェックで高ストレス者に該当した場合、面接を希望すると、会社は医師面接を実施する義務が発生します。医師面接において、医療が必要か・職場配慮が必要かを客観的に判断してもらうこともできるので、面接希望について検討してみてください。
長時間労働の翌月
時間外・休日労働は1ヶ月で45時間以内にとどめることが望ましいとされています。にもかかわらず、80時間を超える時間外・休日労働が発生したり、健康に配慮が必要な方が45時間を超えた場合、原則として医師面接の対象になります。医師の視点から、健康状態や疲労の蓄積度の評価が必要だと考えられます。
衛生委員会
職場の環境がメンタルヘルスの不調に影響する場合もあります。50人以上の従業員がいる会社では、月に1回以上の衛生委員会開催が義務付けられているので、委員会のメンバーに職場環境の問題点を伝えて、衛生委員会の議題にあげてもらい、職場環境の改善をはかるのも、有効な解決策の一つです。
職場における心の健康 : 専門窓口への相談
ハラスメント窓口
職場でよく問題になるハラスメントとして、「パワーハラスメント」「セクシャルハラスメント」「マタニティハラスメント」の3つが挙げられます。ハラスメント相談窓口が設置されている会社も多いので、ハラスメントを受けてメンタルの不調を感じている場合は、相談を検討してください。
外部機関
「会社に相談窓口がない」「相談しても対応してくれない」「相談すると不利益な扱いをされそうだ」、そんな場合にも相談窓口はたくさんあります。会社や健康保険組合が契約している相談機関、地域の医療機関や保健所、労働基準監督署などにも相談できるので、必要なときは考えてみてください。
余談ですが
私はいま労働衛生コンサルタントという資格の取得に向けて勉強しているところです。勉強内容の整理も含め、職場の心の健康に関してまとめてみました。試験に合格することができたら、産業医業務だけでなく労働衛生管理体制の改善に向けて、今まで以上に深く関わり、職場の心の健康を推進していきたいと思います。
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