自己肯定感の高め方

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精神医療の現場から世間一般に広まった概念の一つに「自己肯定感」があります。自己肯定感とは「自分はここにいて大丈夫」という感覚のことであり、これが揺らいでいると、レジリエンス(ストレスを跳ね返す力)が高まらず、自分を否定的に捉えてしまい、感情のコントロールもうまくできません。今回は 自己肯定感の高め方 について考えてみます。

自己肯定感とは

自分の良い面も欠点も含めてOKを出せる感覚を、自己肯定感と言います。他者との比較ではなく、自分自身が「今の自分」を認め尊重することで生まれる感覚であり、物事を前に進めるための原動力となります。自己肯定感は、仕事のパフォーマンスや人生の満足度を上げるうえで重要な要素の1つであり、生きやすさや心の健康などにも大きく影響します。

自己肯定感が低い状態

周囲との違いや自分のダメな部分ばかりが必要以上に気になり、ネガティブな気持ちになることがありませんか?もし頻繁にこのような気持ちになってしまうとしたら、自己肯定感の低さが原因かもしれません。

①過剰に他者と比較してしまう

学生なら友達の勉強の進度やテストの結果が、社会人なら同僚の仕事の成果が気になってしょうがない。このように、周囲の人と自分を過剰に比べてしまう癖がある人は、人と比べて自分を評価することでしか自分の価値を見いだせない、つまり自己肯定感が低い状態かもしれません。

自己成長の観点から、比較対象の人がいること自体は悪いことではありません。しかし、過剰に他者と比較してしまうと、「この人はできるのに、なぜ自分はできないんだ」と自己嫌悪に陥ったり、嫉妬や劣等感で苦しむことに繋がります。

また、自分より下と思う相手と比較したり、あるいは自分より上と思っていた相手が自分より不幸になると、主観的な幸福感が得られるので、比較する行為に拍車がかかります。度を過ぎると、中傷・敵意を含んだ攻撃行動・スケープゴート化といったような非社会的行動に結びつきます。

②失敗を必要以上に恐れてしまう

レジリエンスが低く、少しのミスで自分の人間性まで否定してしまうため、失敗のおそれがあることをとにかく避けようとします。新しい挑戦の機会を、「自分なんかができるわけない」と反射的に拒否してしまうので、なかなか挑戦できず、挑戦してもあきらめやすく、結局やり慣れた仕事を選ぶようになります。

③他者からの評価がとても気になる

自分で自分を認められないため、他者に認めてもらうことで自分の価値を確かめようとする傾向もあります。結果、常に他者からの評価が気になり、いかに他者から評価されるかを行動の基準にします。また、誰かにダメ出しをされると、自分を否定して嫌悪感でいっぱいになるので、「どうすれば他者から否定されないか」という判断で行動します。

自己肯定感が高い状態

自己肯定感が高ければ「自分は自分のままでいい」と肯定することができるため、欠点があったとしても、自分を否定せずに受け入れることができます。他者との比較や他者からの評価を気にして心が疲れてしまうこともありません。

①行動や思考が前向き

物事を肯定的に捉えるため、思考や発言も前向きなものになります。たとえ自分が優れた能力を持っていなかったり、他者よりも劣っていても、「自分は自分のままで良い」と思えるので、他者に振り回されることなく、自分自身を心のよりどころとして堂々と行動ができます。また自分だけでなく他者の長所にも目を向ける傾向があり、相手の考えや意思を素直に受け入れ尊重します。

②失敗を恐れない

物事を「まあ大丈夫だろう」「なんとかなる」と前向きに考えられるため、新しいことや困難なことに対しても失敗を恐れずチャレンジします。たとえ失敗したとしても、それを乗り越えられる強い精神力を持ち、積極的に「また頑張ろう」と失敗を成長の糧にしていくため、結果として成功しやすくなり、人生が豊かになり楽しくなります。

③主体性がある

他者の目を気にせず、他者からの評価に振り回されることもありません。他者からダメ出しされても、「自分はダメな人間だ」と卑下せず、自分の改善点ととらえ、成長へのチャンスへと変えていきます。ストレスや負の感情を上手にコントロールし、自分の長所を活かした働き方にエネルギーを集中することができます。

自己肯定感の高め方

自己肯定感は幼少期の発育環境などに修飾されて形成されていくものですが、大人になっても自己肯定感を高めることができます。そのためには、自分自身を大切にする思考や習慣、経験を積み重ねていくことが欠かせません。

他者と比較しない

幸福度・能力・収入・資産・容姿など、比較対象になりそうなものは様々ですが、他者とは比較せず、自分らしさや平常心を大切にしましょう。焦らず、無理せず、自分の素直な意志に従って行動することで、努力が長続きし、納得できる人生につながります。

また努力が結果に繋がり、自分の中で成長を実感できると、さらに自己肯定感は高まります。比較するのであれば、その対象を他者ではなく、過去の自分に置き換えると良い結果になる場合があります。

完璧主義から脱する

成長意欲が高いことは決して悪いことではありません。ですが「この部分が駄目だ」と完璧を追求しすぎてしまうと、今の自分を否定することにつながります。人間なので、完璧というのはありえません。良い所も悪い所もある自分を認め、どうすれば長所をさらに伸ばせるか、活かせるかを考えていきましょう。

良かった行動をアウトプットする

1日の終りにその日の出来事を振り返りましょう。そして、良かったと思う行動と感じたことを書き留めます。ノートへの手書き、パソコンのテキストエディタ、スマホのメモ機能など、なんでも構いません。以下のようなアウトプットを日々重ねるにつれ、気持ちが少しずつ前向きになり、「自分は大丈夫!」と思えてきます。

  • 早起きできた。時間を有効に使えて気分が良かった
  • 同僚に笑顔で挨拶できた。相手も笑顔で返してくれて嬉しかった
  • 帰りに寄った本屋で面白そうな本を見つけた。読むのが楽しみだ など

まとめ : 自己肯定感の高め方

自分のストレスや、心と体の状態にも向き合わず、低い自己肯定感を放置すると、辛い日々からなかなか抜け出すことができなくなります。小さなことから始め、ものの考え方や意識の持ち方を少しずつ変えて、徐々に自己肯定感を高めていきましょう。

自己肯定感は0〜3歳で土台が築かれると言われており、子育てにおける自己肯定感の育み方について、次回まとめたいと思います。

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