産後のメンタルケア

アイキャッチ : 産後のメンタルケア

大変な経験を経て赤ちゃんを出産されたママは、大きな幸せに包まれることと思います。ただその一方で、やる気が出なかったり、イライラしたり、気持ちが落ち込んだりすることも多いのではないでしょうか。 そのような場合には、 産後のメンタルケア が欠かせません。

私事ではありますが、我が家は先日、第二子である長女が誕生し、無事に新しい家族が加わってくれたことに、大いなる幸せを感じております。ただ、私達夫婦も第一子の育児の際、喜びだけでなく大変さも経験し、方々からは子2人の子育ては1人の2倍以上の苦労があると伺っており、今後に向けて戦々恐々としている面もあります。

産後、どういったことを意識すべきかを私自身に向けて整理する目的が強いですが、今回は、主に産後ママのメンタルケアについて、まとめてみたいと思います。

産後ママが直面する変化

産後のママは、出産を契機に、予測不能な子育てが24時間休みなく続くことを実感されることと思います。ここでは、産後ママが直面する、生活スタイルや対人関係などの環境の変化、あるいは体の状態の変化について、確認していきます。

生活環境の変化

夜、安心して眠れる環境ではなくなります。産前と違い、産後は赤ちゃんの泣き声で頻繁に起こされ、授乳やオムツ交換などで起こされるので、睡眠の時間や質が大きく損なわれます。

また、生まれたての赤ちゃんは特にお世話に手がかかります。たとえば、苦労して飲ませたミルクを、赤ちゃんが布団に吐いてしまうと、授乳をやり直すだけでなく洗濯や掃除も必要になるなど、これまでになかった大きな苦労が加わります。

さらに産後は、赤ちゃんやママの健康管理のため、産後1カ月は外出が難しくなり、家族以外の人と話す機会も限られて、リフレッシュできない環境に変わります。

体の変化

ママの体は出産に伴い、交通事故に遭ったのと同じくらいのダメージを受けるとも言われており、産後のママがに体が元の状態に戻るまで、半年ほど時間がかかることが多いようです。また、妊娠中大量に分泌されていた女性ホルモンが急激に減少するため、自律神経が乱れ、心身に不調を来しやすくなります。その他にも、以下のようなトラブルがあり、これらが重複することも少なくありません。

  • 貧血
  • 授乳のトラブル (痛み、熱感、傷 など)
  • 腱鞘炎や肩こり
  • 頭痛
  • 肌荒れやむくみ

女性ホルモン分泌が妊娠前の状態に戻るには半年から1年ほどかかりますが、特に授乳しているママは女性ホルモンの分泌が妨げられるため、ホルモンバランスの乱れが長引く傾向にあります。

心理面の変化

代表的な心理面の変化は、産後の急激なホルモンバランスの変化により、出産後数日以内に、特にきっかけなく、気分が落ち込んだり、悲しい気持ちになることがあります。これは「マタニティブルー」と呼ばれる状態で、多くのママが経験すると言われていますが、2週間程度で自然に改善することが多いようです。その他にも、以下のような心理面の変化があります。

イライラ感

産後は、訳もわからず泣いている赤ちゃんへの対応に四苦八苦し、心のゆとりが持てなくなり、睡眠不足やホルモンバランスの乱れにより、パパの言動など些細なことでイライラしてしまうことがあります。

不安感

一昔前に比べ、核家族化が進み情報量が格段に増えた昨今、世間と同じような育児ができず、焦りや孤立感から、強い不安を感じるママは少なくありません。また、復職を予定しているママは、仕事と子育ての両立に関しても漠然とした不安を抱える方が多いのではないでしょうか。

対処法 : 産後のメンタルケア

子育て中のママの疲労は蓄積しているにもかかわらず、なお赤ちゃんを保護しなければならないという本能が子育てへと駆り立てます。また、言葉を話せない赤ちゃんと関係を築くことは、自分の母親としての能力と向き合うことでもあり、自己肯定感が揺らぎやすくなります。

放っておくと、適応障害やうつ病などの原因になることがあるので、思い通りに行かないことがあっても、イライラや落ち込みがあっても、ある程度は仕方ないことと割り切って、深く考えないようにしてください。

また子育てだけでなく、家事もこなすというのは、本当に大変なことです。「子育てや家事は他の人に手伝ってもらっても良いもの」と意識し、家族や家事代行サービスの協力を得て、たまにはママもゆっくり休む時間を設けるようにしましょう。少しの間でも子育てや家事から離れることで、心身ともにリラックスできると思います。

医療が必要な場合

一方で、産後の心の不調は病気が原因のこともあります。次のような変調が現れたときは、できるだけ早く医療機関に相談してください。心療内科などへの受診がためらわれるなら、ひとまず出産した産婦人科で相談に乗ってもらえることもあります。

産後うつ

産後3~4週以降に、以下のような心身の変化を起こす「病気」です。

  • 理由なく気分が落ち込む
  • 赤ちゃんへの思いが薄れる
  • 漠然とした不安や焦りを感じる
  • 無力感や絶望感を感じる
  • 眠れない
  • 食欲が出ない など

出産による脳内の化学的変化、ホルモンバランスの変化、ストレスなど、多くの要因が関与していると考えられていますが、はっきりとした原因はよくわかっていません。

産後うつは日本人女性の約1割が発症するとのデータもあり、すべてのママにとって注意すべき病気です。放っておくと症状が悪化して育児や日常生活に支障をきたすこともあり、なかには「いなくなっていまいたい」という気持ちから、衝動的に自殺してしまおうとするママもいます。医療機関への相談をためらわないでください。

甲状腺機能低下症

産後1~3ヵ月で甲状腺の機能に異常が生じることがあります。甲状腺で分泌される甲状腺ホルモンは全身の新陳代謝や活動性を高める作用があり、甲状腺機能が低下することでホルモン分泌が減少すると、抑うつ気分、無気力感、倦怠感、不眠、むくみなどの症状が引き起こされます。

いわゆる「育児疲れ」と症状が似ているため、見逃されていることも多いのですが、なかには妊娠前から潜んでいた甲状腺機能低下症が、妊娠と出産を機に悪化して症状が出始め、長期間にわたる治療が必要なケースもあります。

躁うつ病

精神科領域の代表的な疾患に、「うつ病」や「躁うつ病」がありますが、産後抑うつ状態になったママは、背景に「躁うつ病」が隠れているケースがあります。躁うつ病は100人に1人がかかると言われており、決して珍しい病気ではありません。

「躁うつ病」の人に「うつ病」の薬物療法を行うと、病状が極端に悪くなることがあります。もし薬物療法がなされる場合は、治療開始後の症状の経過を、かかりつけの先生にきちんと報告し、治療方針を十分相談するようにしてください。

まとめ : 産後のメンタルケア

産後ママが、子育てや家事を完璧にこなそうとするあまり、心身の不調が出てきて、それを放置すると、適応障害やうつ病の原因になることがあります。不調を自覚したら、回復を早めるためにも、子育てや家事を無理せず、良い意味で「少しルーズなくらい」がちょうど良いのではないでしょうか。

ただし、心身の不調が長引いたり、日常生活に大きな支障をきたしている場合は、病気が原因の可能性もあるので、できるだけ早く医療機関へ相談するようにしましょう。

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